RUBY EYE
深く問うことはせず、美鶴はバスルームの扉に視線を移す。
「あの子の傍に、いてあげてちょうだいね」
「はい」
美鶴は微笑むと、足音もたてずにその場を立ち去った。
「お待たせっ。綾織くん、次どうぞ」
少し息を乱して、月野がバスルームから顔を出す。
急いだのか、ポタポタと大粒の雫が髪から落ちる。
「ちゃんと拭け。これじゃあ、風呂に入った意味がない」
十夜は手に持ったタオルで、月野の髪をごしごしと拭く。
「ご、ごめんなさい・・・・・・」
俯く月野の、白い首筋。
甘く香るのは、シャンプーだけの匂いじゃない。
「っ!」
十夜は手を止め、顔を背けた。
「大丈夫? 早くあったまった方がいいみたい」
十夜をバスルームに押し込み、月野は小さく息を漏らした。
(血を飲んでないせいだ・・・・・・)