RUBY EYE
小野瀬が頭を抱えていると、中庭に人影を見た。
(美鶴様? いや、月野さんか)
小野瀬は中庭へ足を向けた。
「冷えますよ、月野さん」
振り返った月野は、白い肌が月明かりに照らされて、どこか色香を放っているように見えた。
大人の女性とも違う、女の子が放つ甘すぎるものとも違う、何も知らない無垢な色香。
「小野瀬さんって、私のおじいちゃん―――香月さんを知ってますよね?」
「えぇ、知っていますよ」
「おばあちゃんが、私に似てるって言うんです。雰囲気が」
月野の問いに、小野瀬は微笑を浮かべた。
「そうですね。似ていると思いますよ」
「そう、ですか?」
「えぇ。夜を照らす、月光のようなところが」
小野瀬の表現は、美鶴が香月を例えたものと同じだった。
比喩なのだろうが、ちょっと大袈裟すぎると思う。
「さぁ、冷えますから中へ入りましょう」