RUBY EYE

ほのかに香るのは、香水だろうか?


月野が手を差し出すと、女性は一瞬、驚いたように目を見開いた。


「お兄様・・・・・・?」

「え?」


小声だったけれど、確かに聞こえた。


(お兄様? 私、女なんだけど・・・・・・)


そもそも、この女性と月野では、女性の方が年上だ。


「いいえ、ごめんなさい。見間違えたようね。・・・・・・あなた」


女性は立ち上がり、月野の姿をまじまじと見つめる。


「あなた、もしかして―――月野?」

「そうですけど・・・・・・」


どこかで会ったことがあるだろうか?

月野が首を傾げると、女性は目眩がしたのか、ふらついた。


「あ・・・・・・」

「触らないでっ。汚らわしい!」


差し延べた手を、たたき落とされた。

その衝撃が強すぎたのか、月野は石畳に尻餅をついてしまった。


「私の視界に入らないよう、気をつけてちょうだい」


女性は月野を睨みながら、中庭を出ていく。


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