RUBY EYE

たたき落とされた手が、ヒリヒリと痛む。


「大丈夫かい?」


目の前に差し出されたのは、男の人の手。

月野が顔を上げれば、中性的な男性が立っていた。


「あ、大丈夫です」


月野は男性の手を借りず、立ち上がる。

幼い頃から、母に言われてきた。

【人の手ばかり借りていては駄目。自分の足で立ちなさい】

母は、精神的なことを言っていたのだろうが。


「母が失礼なことをしたね。代わりに謝るよ」

「母?」

「さっきの女性だよ。僕の母で、君の叔母にあたるのかな」


では、先程の女性が梨瀬なのだろう。

十夜の言っていた通り、華やかで蝶のような人だった。


「僕は音無 静貴。君の従兄弟だよ、月野ちゃん」

「私の名前・・・・・・」

「今、君の存在は有名だよ。知らない者など、いないほどに」


それは、月野がダンピールだから。

俯く月野に、静貴が穏やかな声をかける。


< 137 / 403 >

この作品をシェア

pagetop