RUBY EYE
たたき落とされた手が、ヒリヒリと痛む。
「大丈夫かい?」
目の前に差し出されたのは、男の人の手。
月野が顔を上げれば、中性的な男性が立っていた。
「あ、大丈夫です」
月野は男性の手を借りず、立ち上がる。
幼い頃から、母に言われてきた。
【人の手ばかり借りていては駄目。自分の足で立ちなさい】
母は、精神的なことを言っていたのだろうが。
「母が失礼なことをしたね。代わりに謝るよ」
「母?」
「さっきの女性だよ。僕の母で、君の叔母にあたるのかな」
では、先程の女性が梨瀬なのだろう。
十夜の言っていた通り、華やかで蝶のような人だった。
「僕は音無 静貴。君の従兄弟だよ、月野ちゃん」
「私の名前・・・・・・」
「今、君の存在は有名だよ。知らない者など、いないほどに」
それは、月野がダンピールだから。
俯く月野に、静貴が穏やかな声をかける。