RUBY EYE
「月野」
聞き慣れた声に名前を呼ばれて、月野は振り返る。
「やぁ、十夜くん。久しぶりだね」
「お久しぶりです」
静貴と義務的な握手を交わすと、十夜は月野の手を握る。
「失礼します」
「あぁ。月野ちゃん、いつでも部屋に遊びにおいで」
笑顔で手を振る静貴に、月野は小さく会釈を返した。
部屋に連れていかれ、月野は十夜が怒っているような気がして、声をかけれずにいた。
「手は大丈夫なのか」
「あ、うん。大丈夫」
もう痛みは引いている。
少し赤い気もするが、直に赤みも引くだろう。
「・・・・・・なら、いい」
十夜が部屋を出ていくと、月野はやっぱり怒っているのだと、うなだれた。
「十夜、暇なら洗い物手伝ってくれない?」
キッチンに入ったところで、椿に仕事を与えられてしまった。