RUBY EYE
「こんな時間に、何の用です?」
カップを置き、美鶴はふたりを見ずに問う。
「あの娘、ダンピールのことですわ、お母様」
美鶴に歩み寄り、梨瀬は怒りにも似た視線を向ける。
「あんな娘を屋敷に入れるなんて、気が知れません! お兄様は音無を捨てたというのに、その娘を呼ぶだなんて」
激昂する梨瀬を、美鶴は落ち着いた目で見つめ返す。
「お前には関係のないことです」
「私は嫌です! あの娘は、あの汚らしい人間の女の子ですよっ?」
梨瀬の綺麗な顔が、怒りと嫉妬で歪む。
「姉さんは、兄さんが大好きだからなぁ」
「伊織は黙っていなさい!」
怒鳴られて、伊織は肩を落とす。
「お母様。まさかとは思いますが、あの娘を当主にさせようなど、思っていませんわよね?」
「それはないわ。私が亡くなった後、あの子を慧の元へ送るよう、小野瀬達に指示している」