RUBY EYE

「こんな時間に、何の用です?」


カップを置き、美鶴はふたりを見ずに問う。


「あの娘、ダンピールのことですわ、お母様」


美鶴に歩み寄り、梨瀬は怒りにも似た視線を向ける。


「あんな娘を屋敷に入れるなんて、気が知れません! お兄様は音無を捨てたというのに、その娘を呼ぶだなんて」


激昂する梨瀬を、美鶴は落ち着いた目で見つめ返す。


「お前には関係のないことです」

「私は嫌です! あの娘は、あの汚らしい人間の女の子ですよっ?」


梨瀬の綺麗な顔が、怒りと嫉妬で歪む。


「姉さんは、兄さんが大好きだからなぁ」

「伊織は黙っていなさい!」


怒鳴られて、伊織は肩を落とす。


「お母様。まさかとは思いますが、あの娘を当主にさせようなど、思っていませんわよね?」

「それはないわ。私が亡くなった後、あの子を慧の元へ送るよう、小野瀬達に指示している」


< 141 / 403 >

この作品をシェア

pagetop