RUBY EYE

美鶴の返答に、ひとまず梨瀬は落ち着いた。

まだ決まったことではないが、次の音無の当主の有力候補は、梨瀬の息子、静貴なのだ。


「でも、ダンピールって危険な存在だよな」


伊織が薔薇の香りを楽しみながら、ふいに呟く。


「あの子がその気になれば、俺達を殺せるんだから」


脳天を貫かれたって、簡単には死なない。

それがダンピールではなく、普通の人間によるものであれば。


「・・・・・・」

「月野に手を出せば、お前達の命は無いものと思いなさい」


美鶴の冷酷な言葉に、梨瀬は唇を噛む。


「用は済んだのでしょう? ならば、出ていきなさい」

「・・・・・・失礼しますわ」

「おやすみ、母さん」


ふたりが出ていくと、美鶴は疲れたようにため息を漏らした。

梨瀬はわかりやすい性格だから、動き出せばすぐにわかる。

厄介なのは伊織だ。

あれは昔から、兄―――慧の言うことしか聞かなかった。


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