RUBY EYE
(まだ怒ってる?)
黙って部屋を出たのは悪いけど、そこまで怒らなくても。
十夜の真意などわからず、月野は勝手にそう思っていた。
「行くぞ、月野」
「あ、うん」
いってらっしゃいと見送る静貴に頭を下げて、月野は先を行く十夜を追いかけた。
「あら、静貴様。お早いですこと」
「相変わらずみたいだね、椿さんは」
棘のある言葉を向けられても、静貴は笑顔を崩さない。
「ちょうどいいわ。梨瀬様を起こしてきてくださる? 私は、朝から梨瀬様の顔を見たくないので」
「わかったよ。あぁ、そうだ。月野ちゃんの部屋って、2階だよね?」
椿が訝しげな視線を向ける。
「女の子の部屋に勝手に入るほど、常識はずれではないつもりだよ?」
「・・・・・・えぇ、2階ですわ。ちなみに、すぐ隣が十夜の部屋です」
椿は答えると、急ぎ足でダイニングルームへと向かった。