RUBY EYE
「君は僕らを狂わせる。君は残酷だね」
ニッコリと、静貴が微笑む。
グラスの中のワインが、ぐらりと揺れた。
「私、そんなつもり・・・・・・」
「わかってる。君が望んで、僕らを誘ってるわけじゃない、ってことくらい」
グラスを置き、静貴が恭しく月野の黒髪を一房、手に取る。
「でも、気をつけた方がいい」
「・・・・・・」
「君の傍にいるだろう、ヴァンパイアは」
「・・・・・・綾織くんのことを、言ってるの? 綾織くんは」
大丈夫、そう言おうとすれば、静貴が楽しげに笑った。
「僕にはわかるよ。彼は、君が欲しくてたまらないんだ」
髪に口づけて、静貴が上目遣いに月野を見る。
「この白く柔らかな肌に牙を立て、甘美な血を口にしたい。・・・・・・ヴァンパイアだから、ね」
耳元で囁かれ、月野は動けずにいた。
そんなこと、有り得ない。