RUBY EYE
静貴の笑顔を見たくなくて、月野はギュッと目を閉じた。
「何をしているのかしら?」
「これは、お祖母様。こんな夜更けに、どうされました?」
纏わり付くような空気が、消えてなくなる。
月野は体から力が抜け、美鶴を振り返った。
「いらっしゃい、月野」
「はい」
逃げるように、月野はキッチンを出る。
「静貴、行動は慎みなさい」
静貴を一瞥すれと、冷えた月野の体を抱き寄せて、美鶴はキッチンを離れた。
「・・・・・・わかってますよ、お祖母様」
ワイングラスに映る自分の顔は、とても楽しげだった。
一つの運命が廻りだすと、つられて他の運命も廻りだす。
それが幸か不幸かは、廻り出してもわからない―――。
月野をベッドに寝かせると、美鶴が優しくポンポンと胸を叩いてくれる。
「・・・・・・おばあちゃん」
「静貴の言ったことなど、忘れなさい。あれの言葉は、月野には毒だわ」