RUBY EYE

そんなこと思っちゃいけない。

わかっているけど、一度思ってしまうと、簡単には忘れられない。


「月野、起きたか?」

「あ、う・・・・・・うん」


部屋に顔を出す十夜の顔を見て、すぐに目を逸らしてしまった。


「・・・・・・?」

「着替えるから」

「・・・・・・あぁ」


十夜が扉を閉めるのを確認すると、月野はため息をついた。


大丈夫、美鶴も言っていた。

忘れなさい、と。


月野はベッドから下りて、ネグリジェを脱いだ。





階段を下りる十夜の視界に、静貴が映り込む。

十夜はわざと視界から追い出し、階段を早足で下りる。


「渇かないか? 彼女の傍にいると」

「・・・・・・俺は、理性を失ったりしません」


背を向けたまま、十夜は答える。


「でも、本当は欲しいと思ってる。君がその気になれば、彼女は血を差し出すかもしれないよ?」


< 153 / 403 >

この作品をシェア

pagetop