RUBY EYE
そんなこと思っちゃいけない。
わかっているけど、一度思ってしまうと、簡単には忘れられない。
「月野、起きたか?」
「あ、う・・・・・・うん」
部屋に顔を出す十夜の顔を見て、すぐに目を逸らしてしまった。
「・・・・・・?」
「着替えるから」
「・・・・・・あぁ」
十夜が扉を閉めるのを確認すると、月野はため息をついた。
大丈夫、美鶴も言っていた。
忘れなさい、と。
月野はベッドから下りて、ネグリジェを脱いだ。
階段を下りる十夜の視界に、静貴が映り込む。
十夜はわざと視界から追い出し、階段を早足で下りる。
「渇かないか? 彼女の傍にいると」
「・・・・・・俺は、理性を失ったりしません」
背を向けたまま、十夜は答える。
「でも、本当は欲しいと思ってる。君がその気になれば、彼女は血を差し出すかもしれないよ?」