RUBY EYE
伊織が玄関へ来ると、ちょうど月野と十夜が学校から帰ってきたところだった。
「お帰り、月野ちゃん、十夜くん」
「えっと・・・・・・ただいま、です」
なぜ伊織がいるのかわからなくて、月野は歯切れ悪く頭を下げた。
「伊織さんが、何故いるんですか?」
十夜の遠慮のない問いにも、伊織は笑顔を崩さない。
「母さんの顔を見に来たんだよ。それにしても、十夜くんはいいの? 本家に帰らなくて」
「今は、本家よりも大事なことがあるので」
十夜の視線が、隣の月野へと向けられる。
「そうか。でも、本家は大変みたいだよ。捕らえていた咎堕ちが、数名逃げ出したから」
「・・・・・・」
「【粛清の綾織】にしては、珍しい失態だよね」
十夜にも連絡は来ていたが、本家へ戻れという話はなかった。
「逃げ出した咎堕ちの中には浦部もいるそうだし、月野ちゃんは気をつけた方がいいよ」