RUBY EYE
「何もなければいいけど」
椿はため息をつきながら、花瓶を取りに向かった。
制服のリボンを解き、シャツのボタンを外そうと手が触れた時。
部屋の扉が合図もなしに開かれた。
「あ、悪い」
「だ、大丈夫。まだ脱ぐ前だから」
ボタンから手を離し、リボンを机に置く。
「どうかしたの?」
「あぁ、椿が・・・・・・」
「花村さん?」
安心させろ、と言われたが、何を言えばいいのだろう?
「・・・・・・」
「綾織くん?」
月野の瞳が、微かに揺らぐ。
それを見た十夜は、気遣うような優しい声で、問いかけた。
「怖いか?」
「・・・・・・ちょっとだけ」
初めて見た人ならざる者は、浦部だったから。
恐怖の根底を暴けば、彼がいる。
「でも、大丈夫。花村さんが貸してくれたお守りもあるから」
「お守り?」