RUBY EYE
「ふふ。綾織くんがいてくれるだけで、私は十分安心できてる」
「・・・・・・」
柔らかな月野の髪を撫でて、十夜は苦笑する。
本当は、早く彼女はこの地を去るべきなんだ。
でも―――。
「俺の傍から、離れるなよ?」
「うん、ありがとう」
十夜の手は、温かくて優しい。
けど、十夜は思う。
この手で月野に触れると、淡雪を掴もうとするようで、胸が苦しくなるんだ。
日曜日の午後。
月野はお茶を飲もうと、キッチンへ足を運んだ。
「おや、月野さん。お腹でも空きましたか?」
「私、そんなに食いしん坊じゃありませんよ」
エプロンをした小野瀬の姿は、新鮮だ。
椿が他にやらなきゃいけない仕事があると言い、夕食の下ごしらえを小野瀬に押し付けたのだ。
「何か飲みたくて」
「最近、暑くなってきましたからね。アイスティーとアイスコーヒー、どちらにしますか?」