RUBY EYE
紅玉館に帰ると、十夜は部屋に戻らず、キッチンで冷たい水を飲むことにした。
「・・・・・・ふぅ」
「お帰り。月野ちゃんは?」
紙袋を手にした椿が、十夜しか帰っていないことに気づき、首を傾げる。
「愛理が買い物に連れてった」
「ふたりだけで?」
「男はついていったらダメなんだと」
ミネラルウォーターを飲み干して、十夜は小さく息をついた。
「買い物ねぇ、何を買うの?」
「愛理の家の別荘に行くことになったから、向こうで使う水着」
「水着! あら、楽しみじゃない。ねぇ、十夜?」
椿の視線を、十夜は冷ややかに見つめ返す。
「気持ち悪いぞ、椿」
「失礼ね。でも海かぁ、いいわね」
年中無休のこの仕事。
遊びに出かけるなんて、羨ましい。
「椿も行くか?」
「ううん、行かない。美鶴様のお世話もあるし」