RUBY EYE

美鶴はため息をつき、目を伏せた。


「あの、俺がいない間、月野は・・・・・・」

「なるべく外出は控えさせるわ」


十夜は頭を下げ、書斎を出ていく。

美鶴はソファーに背を預け、目を閉じた。


本当は、当主を引き継いでもよい時期に来ている。

一族では、伊織の息子・向陽を押す者達と、梨瀬の息子・静貴を押す者達とで別れている。

しかし、向陽はまだ中学生。

必然的に、静貴が当主になると、誰もが思っている現状だ。


梨瀬は感情に左右されやすく、伊織は人の上に立つ性格ではないが故に、今まで当主を引き継げずにいた。


(静貴・・・・・・あの子を当主に据えるのは・・・・・・)


決めねばならない事とわかっていても、決断が鈍る。

美鶴は目を開けると、仕事を再開するために、ソファーから立ち上がった。










「月野、入るぞ」


ノックもせず部屋へ入る十夜を、月野はいつもの事だと出迎える。


< 235 / 403 >

この作品をシェア

pagetop