RUBY EYE

夏休みの課題は順調に片付いており、今は苦手な数学と戦っていた。


「どうかしたの?」

「これから、実家に顔を出して来る。2、3日で戻るつもりだ」


何事もなければ、だが。


「そういえば、綾織くんはどうして実家じゃなくて、紅玉館に住んでるの?」


愛理から聞いたのだが、綾織本家は、ここから遠くなく、歩いて1時間程度の距離だという。

多少、紅玉館の方が学校に近いが、実家で暮らしても問題ないはずだ。


「美鶴さんは、他の当主からも一目置かれる、素晴らしい方だ。父は、そんな美鶴さんの傍で、当主について学ばせようと、俺をここへ預けたんだ」


以前言っていた勉強とは、このことだったのか。


「大変なのね」

「いや。俺自身、美鶴さんには感謝してるし、実家よりも、紅玉館の方が落ち着くんだ」


実家の話をする十夜は、どこか悲しげだ。


「月野、頼みがある」

「何?」


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