RUBY EYE
綾織本家は、紅玉館と違い純和風。
中庭に見えるのは薔薇ではなく、よく手入れをされた松の木が見え、池には錦鯉。
「お前は、十夜・・・・・・か」
「お久しぶりです、光彦さん」
廊下で出くわしたのは、従兄弟の立花 光彦。
恐らく、光彦は十夜が嫌いだ。
幼い頃から、なんとなく感じていた。
「何故、お前がいるんだ?」
「自分の家に帰ってきて、何の不都合があるんですか?」
十夜の冷たい視線に、光彦はたじろぐ。
いつだって、光彦は虚勢ばかり。
年下の十夜に怯えているくせに。
「坊ちゃん、お帰りですか?」
「秦」
十夜は久しぶりに会う友人に、表情を和らげた。
如月 秦。
十夜より年上で、幼い頃の世話役でもあった彼は、今でもよき友だ。
「お久しぶりです、坊ちゃん」
秦は優しい笑みを浮かべて、十夜に歩み寄る。
「僕は失礼する」
光彦はあからさまに不機嫌な顔で、立ち去っていく。