RUBY EYE
「あの娘の匂いに惹かれ、咎堕ちが生まれてしまったのも事実」
「すべての咎堕ちが、彼女のせいではありません」
十夜の反論に、時臣は怪訝な顔をした。
「お前―――」
「父上。彼女は美鶴さんの孫です。手を出せば、調停の怒りを買うでしょう」
冷ややかな目に、時臣は肩を落とす。
こういう目をした時の十夜に何を言っても無駄だ。
十夜は意思が強い。
それは長所でもあり、時として短所だ。
「しばらくは、居るのだろう?」
「そのつもりです」
「なら、朔に顔を見せてやれ」
時臣は部屋を出ていき、十夜は息をつく。
時臣は、月野に対して好意的な印象を抱いていない。
それが、十夜の胸をざわつかせる。
「坊ちゃん」
「秦、か。ちょうどいい、母上に会いに行く」
十夜は秦を伴って、母屋ではなく離れへと向かった。