RUBY EYE
十夜の母・朔は、体が弱い。
ヴァンパイアの血が極めて濃く、妻にと娶られたが、体の弱さ故に、母屋ではなく離れで生活をしている。
一族の中には彼女を疎んじる者もいるが、表だって口にしたりはしない。
「母上、十夜です」
「まぁ、十夜! いつ帰って来たのです?」
襖を開けた先には、布団の上で上半身だけ起こした母がいた。
今日も体調が良くないのだろう。
顔色が悪い。
「いらっしゃい」
秦は外で控え、十夜は朔の傍に寄った。
母の香りは、柔らかな桜のようで、懐かしい。
「背が伸びたのではない? それに、また色男に磨きがかかったわ」
「母上・・・・・・」
照れたような顔をする十夜の頬を、優しく撫でる。
(母上、また痩せた・・・・・・?)
浴衣の袖から出る、細く白い母の腕。
十夜は悲しくなったが、心配させまいと微笑みを浮かべた。