RUBY EYE
「い、いや・・・・・・」
「変な感じ、だな。いつもなら、癒えていくの、に・・・・・・」
身も凍る程の恐怖を感じているのに、手を伝う血は暖かい。
それが、現実味を帯びていなくて。
自分を見つめるルビーの瞳から、目を逸らせなかった。
「お前が僕を殺すんだ。―――ダンピール」
「・・・・・・」
呪詛のように、光彦が囁く。
「十夜、お前も苦しめばいい。僕みたいに・・・・・・僕はただ、ヴァンパイアの世界を・・・・・・作りたかっ・・・・・・た」
力無く、光彦の体が月野に倒れ込む。
ナイフが深々と心臓を貫き、その血が月野の体を赤く染める。
(私が、殺した・・・・・・?)
光彦の言葉が、耳に響いて離れない。
自分を呼ぶ十夜の声でさえ、聞こえない。
生暖かい血と、手に残る肉を貫いていく感触を最後に、月野は意識を失った。