RUBY EYE
綾織本家―――。
「時臣様、光彦が亡くなったと」
畳が隙間無く敷き詰められた大広間の奥。
時臣は報告を受けると、小さくため息を漏らした。
「十夜か?」
「いえ、その・・・・・・」
言い淀む男を、時臣が無言で見据える。
「自害した、と言えますが・・・・・・。混血児の娘が」
男が詳細を述べると、時臣は眉間を険しくした。
「なんだ? 騒がしい」
襖の向こうから、良く知る声が聞こえてくる。
これは、桐条 慶介―――愛理の父だ。
「どうしたのだ?」
「わかりません。見てまいります」
男が立ち上がろうとした瞬間、襖が開けられた。
「―――っ!!」
そこに立っていたのは、慶介ではない。
18かそのくらいの、美しい娘だった。
藤色の襦袢を見に纏うその娘に、時臣は見覚えがあった。
最後に見たのは、7年前―――彼女が11の時だ。