RUBY EYE

秦は苦笑しながら、椿の後に続いた。










スタンドライトだけ点けた、月野の部屋。

椿が持って来た水差しとコップが、ベッドのすぐ傍に置いてある。


「・・・・・・」


あれから、月野は一度として目覚めていない。


―――コンコン。


「十夜、少し良いかしら?」

「美鶴さん・・・・・・」


十夜は部屋を出、廊下で美鶴と向き合う。


「あの子の様子は、どうかしら?」

「わかりません。まだ、目も覚めていないので」


ただ、うっすらと顔が青いのはわかる。


「そう。小野瀬に言われたのだけど・・・・・・。あの子を、両親の元へ帰した方が良いのでは、と」

「・・・・・・」

「元々、慧はあの子がダンピールを受け入れる為に、ここへ預けたのだから。目的を果たした後ならば、文句も言わないでしょう」


それに、慧は娘を溺愛しているから―――。

美鶴の言葉に、十夜は何も言えなかった。


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