RUBY EYE
「あ・・・・・・」
年は20代後半で、浮かべる笑顔は優しげで、いい人そうに見える。
「どうかした?」
「い、いえ。大丈夫です」
いい人そうに見えるのに、なんだろう?
逃げ出したい気持ちが、沸き起こる。
「もしかして、道に迷ってる?」
「え?」
「ここら辺の子じゃないよね? 迷ってるなら、案内するよ」
いい人。
いい人なんだろうけど、素直に好意を受け取れないでいる。
(・・・・・・目が、笑ってない)
優しげな微笑みの中で、男性の目だけが、違和感を放つのがわかった。
笑っていないんだ、この人。
「大丈夫です。行き先はわかってるんで」
「ホントに?」
「は、はい。あの高台の家に―――!」
その瞬間、背筋に走った悪寒。
目の前の男性が一瞬、その表情を変えたのだ。
「あ、あの・・・・・・失礼します!」