RUBY EYE
純粋なまでの殺意と憎悪に、月野は身を震わせた。
今まで見てきたヴァンパイアと、何かが違う。
「摩耶!」
「私以外、十夜にはいらないのっ」
振り下ろされたナイフは、月野の身体を傷つける前に、それを庇った時臣の腕を突き刺した。
「おじ様? どうして?」
摩耶と同じくらい、月野も驚いた。
けれど、月野はなんとなく察した。
彼が自分を庇ったのは、優しさでもなければ、正義感でもない。
今ここで月野を殺されるわけにはいかない。
だから、庇ったのだ。
「摩耶、下がりなさい」
「―――嫌よ。いや、いや、いやっ!」
我が儘を言う子供のように、摩耶はかぶりを振る。
その瞳は激しさを増し、赤い色が彼女の心の荒れようを示していた。
「十夜は私に愛してると言ったわ」
「・・・・・・!」
愛してないなんて、きっとこの女が言わせたの。
摩耶は時臣を押しのけ、月野の腕を掴んだ。
「摩耶! やめなさい!」