RUBY EYE

叫び声にも似た摩耶の声が、遠ざかっていく。


「部屋を用意させる。十夜、お前は―――」

「紅玉館へ帰る」


十夜は立ち上がり、揺れる視界の中で、時臣を睨んだ。


「月野に近づくな」

「・・・・・・」


十夜は月野を立たせると、ふらふらとした足取りで部屋を出ていく。


「綾織くん・・・・・・」

「心配するな。もう傷は治ってる」


これでは、浦部の時と同じだ。

十夜はまた、血が足りていない。


「待ちなさい」


時臣の声に、月野が振り返る。


「送らせる。そんな状態で、歩いて帰らせるわけにはいくまい」


月野は腕に傷を負い、十夜は歩くのも辛い。

ここは、素直に申し出を受けるのがいいと、月野は小さく頭を下げた。










「! ど、どうしたの!?」


紅玉館に帰ると、椿が驚愕の声を上げ、ふたりを見た。


「後で説明する。だから、今は―――」


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