RUBY EYE

十夜は限界を迎え、そのまま玄関に倒れ込んだ。


「十夜?! 小野瀬さんを呼んでくるから、待ってて」


椿は素早く駆け出し、小野瀬を呼びに向かった。


「綾織くん。ごめんなさい、ごめんなさい・・・・・・っ」


また、十夜に助けてもらった。

それが申し訳なくて、涙が止まらない。

自分は無力だ。

奇跡なんかじゃない。


月野はずっと、十夜の冷たい手を握りしめていた。










椿はひとり、ぐつぐつと煮えたぎる鍋を見つめていた。

十夜はまだ目覚めず、月野は寄り添って傍を離れようとしない。

恐らく、十夜はまた血を飲まねばならないだろう。

月野も、それをわかっている。


鍋の中のスープは、月野の為に作っているのだ。

十夜は血を飲めばいいが、月野は食事で栄養を取るしかない。


(一体、何が・・・・・・)


聞こうにも、今はふたりとも話せる状態じゃない。

もやもやする気持ちに、苛立ちが募る。


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