RUBY EYE

「・・・・・・ッ」


苛立ちを引き金に沸き上がる衝動に、椿は顔を歪めた。

瞳が赤く染まりかけ、必死に理性を保つ。


椿の奥深くに眠る破壊衝動。

それは、ヴァンパイアとしての本能なのかは知らないが、時折顔を覗かせる。


「・・・・・・はぁ」


不意に人の気配を感じて、椿は振り返る。

立っているのは、疲れた顔の秦。


あのあと、秦は摩耶を綾織本家の檻へ閉じ込めた。

見張りもつけ、時臣から十夜は紅玉館へ帰ったと聞き、やって来た。


「・・・・・・あんた、何か知ってるの?」

「・・・・・・あぁ」


秦は落ち着いた声で、月野の身に起こった出来事を、椿に話した。


「―――!!!」


話し終えた瞬間、秦の頬を掠めたのは、白い皿だった。

背後で砕けた皿の破片が、キッチンの床に広がる。


「あんた、自分が何をしたのかわかってんのっ?!」


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