RUBY EYE
怒りで赤く染まる瞳。
皿やコップを投げつけるたびに、砕けて破片が飛び散る。
しかし、秦はどれも避けようとはしなかった。
顔に傷を負ってもすぐに癒え、また傷を負う。
そんなことを繰り返していく内に、椿が荒い呼吸を吐き、顔を背けた。
「ちょっとは避けなさいよ。・・・・・・わかってるわ。あんたにも立場があるってことくらい」
わからないわけじゃない。
食器を投げつけるなんて、八つ当たりにも近しい行動だ。
椿が許せないのは、少しくらい話してくれれば、違った結果になっていたかもしれない、と思うから。
「それでも、あんたがそんな命令に従ったのかと思うと、情けなくて・・・・・・殺してしまいたいくらい」
運が悪ければ、時臣はあの場で月野に摩耶を殺させようとしただろう。
「・・・・・・悪かった」
「もう、いいわ。それより、片付けるの手伝って」
床に広がる破片を、椿は面倒そうな目で見た。
「わかった」
秦は苦笑しながら、落ちた破片を手に取った。