RUBY EYE

重ねられた唇を、十夜は容赦なく噛んだ。

滲む血と一瞬の痛みに、摩耶が体を離す。


「言うことを聞け、摩耶」


瞳が赤く染まり、空気が震えた。

こんな十夜を、摩耶は初めて見た。


「そんなに、あの女が大事?」

「月野に何かあれば、お前を―――殺す」


その目に、迷いも偽りもない。

怒りと殺意が混ざるその瞳に、摩耶は顔を歪めた。


「! 朧村正。何故・・・・・・」

「十夜が暴れた時のために持って来たの。でも・・・・・・」


服を着て、摩耶は刀を手にする。


「何をするつもりだ?」

「静貴を待っていられないわ。私が殺すっ」

「摩耶!」


十夜の制止も聞かず、摩耶は寝室を出ていく。


「クソッ!」


手枷が邪魔をして、ベッドからも出られないなんて。

十夜は腕から血が出ても構わずに、何度も手枷から逃れようと、抗い続けた。


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