RUBY EYE

音無の当主は、自分なのだから。


美鶴は立ち上がり、動揺する自身の気持ちを落ち着けて、歩き出した。










―――綾織本家。


伊織による摩耶の脱牢に、本家はざわついていた。


「これは音無の裏切り、いえ反逆です!」

「しかし、摩耶は桐条家の者。ひいては綾織家の問題です。一方的に音無を責めるのは如何かと」


一大事ということもあり、香堂も揃っている。

大広間で交わされる議論の中心には、伊織がいた。


「おい、これってヤバくないか?」

「知らないわよ!」


大広間の奥、鷹斗と愛理が囁きあう。

まさか、こんなことが起きるなど、誰が予想できただろうか。


「【調停】が本来ならば取り仕切るべきだが、こんな状況だ。我ら【秩序】がこの一件を預かるべきでは? 当主」


問われ、香堂家当主・鷹幸―――鷹斗の父は苦い顔をする。


「伊織殿は何も話さず、音無家当主も未だ来ず。これでは、何とも言えん」


再び、ざわつきが大広間を支配する。


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