RUBY EYE
「時臣様。【調停】の役割を、一旦、我が【粛清】が担っては如何でしょう?」
「それはおかしい! 【粛清】はお忘れではありませんか? 摩耶の存在を」
一向に進まない議論など、時間の浪費だ。
時臣と鷹幸がため息をつくのと同時に、大広間の襖が開け放たれた。
「相変わらず、下らない話し合いがお好きなようだ」
「慧!」
「慧様?!」
誰もが彼の存在に驚きを隠せない。
彼は家を捨てた男。
何故、ここにいるのか。
「・・・・・・兄さん」
「久しぶりだな、伊織」
伊織の瞳が、大きく見開かれる。
自分が世界の中心とし、いなくなってしまった最愛の兄。
これは、夢だろうか?
「大体は小野瀬に聞いたよ。お前は今、俺に何を差し出せる?」
大広間が、静寂に包まれる。
誰も、言葉を発しようとしない。
「・・・・・・これを」
伊織が差し出したのは、ありふれた普通の鍵。
「静貴のマンションに、十夜はいる。それは、十夜を助けるための鍵だ」