RUBY EYE

手枷の鍵。

摩耶に持たせなかったのは、彼女が枷を外す危険性を孕んでいたから。


「上出来だ。・・・・・・あなたがたは、何も変わらないようで、安心しましたよ。失礼します」


皮肉を込めた言葉を残し、慧は大広間を出ていく。

その後を、秦が急いで追いかけた。


「音無家当主、参りました」


美鶴が入れ代わるように、大広間へ足を踏み入れた。

集まった者の中で、一番の年長者である美鶴。

おのずと、発言力は弱まる。


「まずは、息子が仕出かしました摩耶の件、深くお詫び致します」


頭を下げる美鶴の姿に、皆、ばつが悪そうに視線を逸らす。


「今回の件について、我らが議論を交わす必要はありません」

「と言うと?」

「渦中の中心にいるのは、私の孫娘。どのような結果になろうとも、非のすべてを、私が受けます」


それは、美鶴が初めて見せた、“祖母”としての愛情。


「ですから、どうか見届けてください」

「だが、しかし―――」


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