RUBY EYE

慧は笑顔を浮かべると、足早に立ち去る。


「俺も行かないと」


秦は気合いを入れて、教会へと駆け足で向かった。










蝋燭の明かりで照らされた教会に、足を踏み入れる。

ゆらゆらと揺れる蝋燭は、幻想的にも見え、同時に狂った人の心を表しているようにも見えた。


「ようこそ、月野ちゃん」


教会の一番奥で、微笑む静貴。

中性的なその姿が、教えを説く優しい神父のようだ。


「あの、綾織くんは・・・・・・」

「ワインは・・・・・・未成年だったね」


月野の問いに答えることなく、静貴はワインをグラスに注ぐ。

お酒の香りが、鼻腔を刺激する。


「静貴さん!」

「そんなに焦らなくても、大丈夫だよ。十夜くんは、ここにはいないから」


ワインを口に含み味わうその様は、血を飲み干す異形の者に重なる。

ヴァンパイア―――。

それは、彼女を襲った化け物で、彼女を守った愛しいあの人。


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