RUBY EYE

物事に表と裏があるのは知っている。

それは、人もヴァンパイアも同じだと思う。


けれど、今自分が見ている静貴には、どちらが表で、どちらが裏なのか、わからない。


「そんなに警戒しなくてもいいよ」


グラスを揺らすと、ワインも揺れる。

月野は、彼の行動の真意がわからずにいた。

何故、嘘をついてまで自分を呼んだのか。

十夜はどこにいるのか。

静貴は―――何がしたいのか。


「摩耶ちゃんを地下牢から出したのは、僕なんだよ」

「え?」


突然の告白。

月野は一瞬、何を言われたのか理解できなかった。


「摩耶さんを、牢から出した?」

「そうだよ。初めは、咎堕ちだけを出そうと思っていたんだけど、桐条家にも牢があるのを思い出してね」


地下牢に忍び込み、摩耶を見つけた。

死んだと思っていた者が生きていると知った時の驚きようは、比べようがない。

静貴はその後、光彦の掲げる“ヴァンパイアの世界”に賛同するように見せかけ、彼を利用した。


< 361 / 403 >

この作品をシェア

pagetop