RUBY EYE
物事に表と裏があるのは知っている。
それは、人もヴァンパイアも同じだと思う。
けれど、今自分が見ている静貴には、どちらが表で、どちらが裏なのか、わからない。
「そんなに警戒しなくてもいいよ」
グラスを揺らすと、ワインも揺れる。
月野は、彼の行動の真意がわからずにいた。
何故、嘘をついてまで自分を呼んだのか。
十夜はどこにいるのか。
静貴は―――何がしたいのか。
「摩耶ちゃんを地下牢から出したのは、僕なんだよ」
「え?」
突然の告白。
月野は一瞬、何を言われたのか理解できなかった。
「摩耶さんを、牢から出した?」
「そうだよ。初めは、咎堕ちだけを出そうと思っていたんだけど、桐条家にも牢があるのを思い出してね」
地下牢に忍び込み、摩耶を見つけた。
死んだと思っていた者が生きていると知った時の驚きようは、比べようがない。
静貴はその後、光彦の掲げる“ヴァンパイアの世界”に賛同するように見せかけ、彼を利用した。