RUBY EYE

狂った男が浮かべるのは、穏やかではない狂喜に満ちた笑顔。


「摩耶さんは、あなたに利用されて・・・・・・?」

「彼女は自分の意思で動いているよ。僕は、彼女の背中をちょっとだけ押したにすぎない」


月野は後ずさるが、静貴はすぐに距離を詰めてきた。

間近にあるのは中性的で、綺麗な顔。


「あなたの目的が、私にはわかりませんっ」


足がもつれ、床に倒れ込む月野。

抵抗のように口から出た言葉に、静貴は楽しげに笑う。


「目的なんてないよ。楽しめればいいんだ」


壊したい欲望。

それによって感じるのは、“今”を生きているという刹那的な悦楽。


「私には、わからない・・・・・・」

「理由が欲しいなら理由をあげるよ。君が満足する“理由”を」


悪魔のような囁きに、月野は息もできないような気分になる。


「でも、それは所詮、君が納得するための偽りだらけの中身のない“言い訳”だ。僕は理由なんていらない。“今”がすべてだ」


< 363 / 403 >

この作品をシェア

pagetop