RUBY EYE

月に照らされた抜き身の刀は、ため息を漏らすほど美しい。


「殺してやる! 私は、十夜さえいればいいの!」


他に何も望まない。

家族の愛もいらないし、友達もいらない。


唯一、愛する人―――十夜だけを求める。

なのに、あの人は私を見てくれない。


「そんなのは嫌っ! あんたがいなければ、十夜は私を見るわ。そうでしょう?」


純粋な愛は、いつしか本人を蝕む程に、いびつに姿を変えた。


月野は、目を逸らさなかった。


「私は・・・・・・綾織くんが好き」


口にした言葉は、摩耶の叫びより小さい。

けれど、彼女と同じくらい強い思いだと、自信を持って言える。


「やめて・・・・・・。やめて! やめてっ!!」

「ううん、やめない。私は綾織くんが好き。だから、あなたから逃げない」


ヴァンパイアのように強くない自分。

それでも、彼女の前から逃げたくない。

今逃げたら、十夜に気持ちを伝える資格を失ってしまう。


―――自分の足で立つ。


それは、月野の小さくも強い覚悟だった。


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