RUBY EYE
ルビーアイ
誰かを愛した経験はない。
だから、美鶴の気持ちがわからなかった。
でも、今なら何となくわかる。
誰かを愛する気持ち。
温かくて、嬉しくて、少し苦しい。
愛した人は、ヴァンパイア―――。
刀を喉元に突き付けられ、月野はごくりと唾を飲み込む。
摩耶の瞳は、ルビーのように真っ赤。
美しいその瞳に宿るのは、美しいとは言い難い感情の渦。
「・・・・・・摩耶さん」
「私を気安く呼ばないでっ」
刀を持つ手に力が入る。
「綾織くんが、好きですか?」
それは、素直な問いかけだった。
「・・・・・・好きよ。大好き。愛してる」
だから、自分だけを見てほしい。
愛してる、と彼にも言ってほしい。
それは、我が儘?
「私も好きです」
「うるさい」
相手が自分のことをどう思っているかわからない。
だから、気持ちを伝えるのを躊躇った。
それに、十夜は自分と違い過ぎる。
綺麗で、優しくて、頭も良くて、次期当主。