RUBY EYE
月野が無事で、ちゃんと生きて、自分の前にいる。
それだけで、こんなにも嬉しい。
「嫌! 嫌嫌嫌!! 私の前で、そんな女と・・・・・・。いやぁ―――!!!」
狂ったような悲鳴は、夜に染まる森に響き渡る。
月野はその叫びに、身を震わせた。
それは、彼女が理性を完全に捨てた瞬間だった。
「月野、ここにいろ」
「でも・・・・・・」
十夜は微笑むと、摩耶に刀を向けた。
もう、迷いはない。
「摩耶。ここでお前を殺す」
それが、自分が彼女に贈れる、せめてもの慈悲と優しさだ。
「嫌・・・・・・いやいや嫌ッ」
流れる涙は、悲しみなのか、怒りなのか、憎しみなのか。
彼女の目に映る世界は、きっと、絶望でできている。
「私を愛してると言って! 私だけを見てるでしょう?」
縋るような願いに、十夜は首を振る。
彼女の前で偽り続けた自分の心。
もう、偽ることはやめたんだ。