RUBY EYE
本当に、綺麗な月だ。
(災い、か)
結局、あの娘がもたらしたものは、災いではなかった。
彼女はただ、ゆっくりと廻る運命の輪を、少しだけ早めただけだ。
「今夜は、お前と眠ろう、朔」
「はい、時臣様」
朔は微笑み、愛しい夫の腕に頬を寄せた。
「月野ちゃ〜ん?」
燃える教会を背に、椿は月野の姿を探す。
「あんたも探しなさいよ」
「はぁ・・・・・・」
何と言うか、期待した自分が悪いのか。
教会から脱出した後の椿は、珍しくしおらしかった。
だというのに、椿はすぐに気持ちを切り替えて、月野探しに精を出す。
「なぁ、椿」
「何よ?」
「お前は俺のこと―――」
決定的な台詞を遮ったのは、悪気を知らないあの子。
「花村さ〜ん」
「月野ちゃん!」
手を振る月野に肩を借りているのは、十夜だ。
「無事みたいね。で? 何か言いかけたでしょ?」