RUBY EYE

椿が振り返り、秦に話の続きを促す。


「いや、なんでもない」

「何よ? 言いたいことがあるなら、言えばいいのに」


椿は不思議そうだが、同時に不満げにも見えた。


「あ、そうだ」

「ん?」


月野に駆け寄る前に、と椿はもう一度、秦を振り返った。


「一応、助けてもらったし。―――ありがと」

「・・・・・・あぁ」


まぁ、今はこの笑顔を見れたから、良しとしよう。

秦は大きく夜空を仰ぎ見ると、夜明けが近いことに気づいた。










―――紅玉館


「母さん・・・・・・」


バラ園に佇む母の背に、伊織は小さく声をかけた。


「お前が何をしたかったのか、私にはわからない」


伊織は、目的を果たした。

静貴の最後と、十夜の勝利、そして月野が変えた運命。

だが、それは他者から見れば理解され難い。


「わからないけれど、お前は私の息子ですよ」


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