RUBY EYE

血の繋がりや、共に過ごしてきた日々が、それを雄弁に語ってくれる。


「・・・・・・母さん」

「前を向きなさい。お前は、今を生きてるのだから」


今があるなら、明日もある。

刹那的に見える“今”は、先の見えない、限りなく広がる未来を示すもの。

それは、伊織に語りながらも、美鶴自身にも語っていた。


「私達は、今を生きてる」


死に縋ったあの日々を、無意味だとは思わない。

あの日々には、きちんと役目があった。

愛した夫には、いつか眠りの後に出会えるだろう。

だから今は、過ちを犯した息子と、無垢なあの孫娘と共に、生きよう。


「美鶴様、月野さん達が帰ってきました」

「そう。では、迎えに行きましょうか」


未来は明るい。

ほら、夜が終われば朝が来る。


ほんの少しだけ長い夜が明けていく姿に、美鶴は優しい笑顔を浮かべていた。


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