RUBY EYE
「月野、お父さんと帰るかい?」
「・・・・・・ううん。ここにいる」
月野は微笑み、小さく首を振る。
「それは、十夜くんがいるから?」
「否定はしないわ」
慧が悲しげな顔をすると、月野はおかしくて笑ってしまった。
「でも、それだけじゃないの。今は、おばあちゃんや花村さん、小野瀬さん、みんなといたいから」
「そうか。でも、お父さんは心配だな」
深いため息をつく慧を、月野が不思議そうに見つめる。
(年頃の男女がひとつ屋根の下。しかも、隣の部屋っ)
美鶴や椿、小野瀬の部屋は少しばかり遠い。
万が一!
億が一にでも間違いが起きれば・・・・・・。
「釘を刺しておくか」
「何か言った?」
ボソッと呟かれた、慧の不穏な台詞。
「いや、なんでもないよ。一応、母上にも挨拶しておこうかな」
慧は立ち上がり、月野の部屋を出た。
「あ」
「・・・・・・こんにちは」