RUBY EYE
綺麗な悲鳴を上げて、月野は恐る恐る振り返る。
さっきの男の人がいたら、どうしよう?
「・・・・・・」
けれど、その心配は杞憂だったらしい。
振り返り見上げた先に立っていたのは、物語から飛び出してきたみたいに、綺麗で美しい青年だった。
黒く艶のある髪が風で揺れ、月野を捉える瞳もまた、深い闇を湛える黒。
滑らかな陶器のような肌と、すらりと伸びる手足。
思わず見入ってしまうその容姿に、月野は言葉を失っていた。
(さっきの人より・・・・・・ううん、比べるのが失礼なくらい、綺麗・・・・・・)
どのくらい見つめあっていたのかわからないが、青年が痺れを切らしたように口を開いた。
「音無 月野か?」
「声も良い・・・・・・あ、音無 月野です!」
我に返り、月野は慌てて立ち上がる。
背も高い青年は、懐中時計を取り出し、時間を確認する。