xxxFORTUNE 〜恋の魔法〜
THE FIRST EPISODE
『ローナ、俺と婚約しろ』
再び人間界に戻ってきた日のことが、忘れられない。
あれから数ヶ月…久しぶりの人間界。
そよ風にカーテンが揺れる昼時───。
エシャルで料理の練習をした。
掃除のやり方も学んだ。
魔法を使うことにも、だいぶ慣れた。
人間界での生活も、あたしの中では大事な時間になっている。
「すず、どうかした?」
「え?ううん、なんでもないわ」
ぼーっとするあたしに、隣に立っている里音が声をかけてくれる。
一緒にキッチンで料理中。
「うわー‥いい匂い」
背後から幸せそうに、佐久間さんが言った。
「がんばって作ったの。
美味しそうでしょう?」
笑って答えると、彼は相変わらず人懐っこい犬のように瞳をキラキラさせる。
「うん、すっごく美味しそう。
でもぼくが言ったのは、ヒメの髪の毛がいい匂いって意味だよっ」
うしろからあたしの肩に手を乗せて、楽しそうに言った。