xxxFORTUNE 〜恋の魔法〜
特にどうするわけでもなく、ただ無意識に。
時々頭に浮かぶのは、エシャルの美しい景色。
ステンドグラスが輝く大広間。
魔法学校で、教本を片手に廊下を歩く生徒たち。
森中に響き渡る小鳥達の歌声。
キラキラ輝く噴水。
それから───
「すず」
それから……
「すず」
「痛っ」
蘇る記憶を真っ白にするように、突然頭に衝撃が走った。
片手で頭を押さえながら振り返ると、ベッドの上で上半身だけ起こした愛琉さんが。
視界に飛び込んできたものに、一瞬思考が停止。
「きゃーっ!」
夜なのも忘れて、近所迷惑になりそうな悲鳴をあげてしまった。
「うるせ、バカ」
慌てた愛琉さんに片手で口を押さえられる。
もう片方の手で抱きしめられているから、もがいても逃げられない。
心臓が激しく脈を打っていてうるさい。