xxxFORTUNE 〜恋の魔法〜



どうしたの?と心配してくれる佐久間さんに、なんでもないと首を振る。


一度も振り返らずに外に出ると、名残惜しさに負けてちらりと窓の向こう側に視線を向けた。

光が反射して、部屋の中の様子は見えない。



「ヒメ?」

「ううん、なんでもないの」

「さっきから、そればっかりだよ?」


心配させちゃいけないから、説明したいのに。

この胸のモヤモヤを上手く言い表す言葉が見つからない。


庭に出てみると、一カ所から煙が出てる。

落ち葉がいっぱい燃えているみたい。

火はあまり大きくなくて、近付くと程良く手を温められるくらいだ。


「はい」

佐久間さんは、その近くにあったものを渡してくれる。


「これは?」

「焼き芋だよ!
美味しいんだ、さっき焼いたの。
秋といったら、やっぱりこれだよね、うん」


にこにこしながら、食べて食べてと催促される。

恐る恐る口に運ぶと、初めての味が口いっぱいに広がった。






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