チャリパイ・スピンオフ~テロリスト羽毛田尊南~

「こんな事言ってる場合じゃねぇが……やっぱり広いフロは気分がいいねえ~♪」


羽毛田は、タオルを頭の上にのせて呑気にも湯船に浸かっていた。
重いトランクを抱えて走り回っていた後だけに、フロは思いのほか心地良く感じられる……


しかし、そんな悠長な事は言ってられない。
今、この瞬間にも、犯人が一億円を取りに脱衣所へと出没しているかもしれないのだ。


その現場を押さえて、犯人を捕まえる方法もあるが、もし犯人に仲間がいれば鶴田教授の命は無い……しかし、カネが犯人に渡ったとしても、鶴田教授が無事に帰って来る保証は無い……
どちらを選ぶか悩ましい限りである。



ふと、羽毛田は脱衣所から聞こえる歌声に気が付いた。



『♪あなたを~とて~も~あ~い~し~て~る~~のぉ♪でも~♪でも~♪いけ~ない~わ♪
だって♪あなた~は♪
わたしの♪わたしのご主人様だか~~ら~☆』


「誰だ?銭湯で変な歌、歌ってんのは?」


何故、男湯の脱衣所で若い女性の歌声が聞こえるのか……羽毛田は、その歌をどこかで聞いたような気がした………


いつ聞いただろう……

一週間前?

三日前?

昨日か?……いや、今日だったか……








「ヤバイ!あれは連絡用の携帯の着メロだっ!」

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