エレーナ再びそれぞれの想い
 雨がやみ、土砂崩れがあった本家の辺りでは、救助活動やがれきの撤去作業が開始された。
シュウはやがて目を覚ました。
「ん? 僕は……」
シュウには中沼とプリシラが付き添っていた。
「シュウ様」
「ご主人様、目が覚めましたね」
シュウは突然表情を変え、
「そうだ、母さんと祖母ちゃんは?」
中沼とプリシラが何も言わず、首を横に振った。
「そうでしたね」
シュウは荒れる事もなく落ち着きを取り戻していた。
シュウのそばには白川家の護身刀が置いてあった。
「これは本家の。なぜここに?」
中沼は泥のついた護身刀を手に取った。泥は既に渇いていた。
「昨日、土砂崩れの現場にご主人様と行った時に、私が見つけ出したんです」
そう答えるプリシラ。
「そうでしたか。
あの場所にいた白川一族の方々は全員死亡、または行方不明。
私は用事で本家を離れていましたので難を逃れました。
当主様と結衣様を助ける事が出来ず申し訳ありません」
中沼は、謝る。
「貴方のせいじゃありません。中沼さんだけでも無事で良かったです。
それに、これからの事を考えなくてはなりませんね」
このような状況でも周囲を気遣い、本家の再興まで考えるシュウに、中沼は、心が痛んだ。
そうは言ってみたものの、シュウはうつむいた。
シュウが一言も辛いとは口にせず、相当無理をしている事は、明白だった。

 土砂崩れがあってから、なぜかシュウの姿は以前よりはっきりと見えるようになった。
「土砂崩れで再び家族を失ったのだ。
ようやく幸せをつかみ成仏しかけていたのに、シュウはかえってこの世に強い想いを残してしまった。
あれじゃ成仏出来ない。
シュウの姿が以前よりはっきり見えるようになったのは、この世への想いがあいつの霊力をより強くしてしまったからだ」
ジェーシーは分析した。
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