エレーナ再びそれぞれの想い
 寮の空き室で、エレーナとさやかはふたりになった。
「噂には聞いていたけど、慎一と全く同じ波動。
本当に慎一の生まれ変わりなのね。
話してみて分かったけど、あれだけ大変な目に遭っても、冷静で、自分のやるべき事を自覚し、自分の事よりも、執事の中沼さんや私達を気遣う。
まだ、高1なのに。
慎一をはるかに超えているわね」
さやかは、シュウを褒める。
「はい。シュウ君は弱音一つ言わず、立派です。
最初、本人は、自分は慎一さんみたいにはなれないって自信なさそうでした。
でも、慎一さんみたいになるって私に言ってくれたんです。
今のシュウ君は、慎一さんに負けないくらい立派な契約者です」
エレーナは、我が契約者を誇りに思っていた。
「ところで、清らかな心を持った人は見つかったのですか?」
エレーナが質問した。
「エレーナさんこそ?」
さやかも逆に聞き返してきた。
エレーナは首を横に振る。
「そう」
さやかはがっかりした。そして 
「私は、一応見つけはしたんだけど、高齢で体調も思わしくなく、あの人に
協力を求めるのは酷というものね」
「そうですか」
さやかの話しに、エレーナも清らかな心を持つ者を見つける事がいかに難しいか、思い知らされたような気がした。
「天上界の巨大樹は、以前よりもさらに力が落ちてきている。
巨大樹の力の源は人間の清らかな心。
でも、その清らかな心の人間が極端に減って見つからない。
少しでも早く、清らかな心を持った人をひとりでも多く見つけないと巨大樹は枯れ、私達は、巨大樹から力を得られずに死んでしまう。
それは貴方も知っているでしょ?」
さやかは焦っていた。
「でも、家族を失ったばかりなのに、今のシュウ君に私達に協力を求めるのは酷ね。
エレーナさん、誰か身近に清らかな心を持った人は思いあたらない?」
「そう言われても……とにかく、捜しましょう」
エレーナもそう言うのが精いっぱいだった。
ふたりは危機感を募らせた。
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